手がぬけた

 

cc145 春のゴールデンウィークや秋の連休の昼間に小児科の救急当番に当たることがあります。お天気が良ければ、外出する家族連れが多いんでしょう、幸い小児科医は夕方までは暇です。その代わり、忙しそうなのが、外科や整形外科の担当の先生です。小学生以上ならば怪我や捻挫が多いですが、2歳から5歳の子どもでは、「手が抜けた」「急に腕を痛がる」と言って受診する子が目立ちます。親が手をつないでいて子どもが転けそうになって引っ張ったり、ふざけて腕をつかんで身体を持ち上げたりした後に、急に腕を痛がってダラリと下げたままになります。じっとしていると痛みはすぐ消えますが、動かすと痛がります。小さい子は骨と骨をつなぐ靭帯が弱いので、急な力が加わると靭帯が骨からずれてしまうのです。これを「肘内障」と呼びます。レントゲンは撮らないでも診断はできますが、骨折を疑う時は撮影することもあります。ほとんどの場合、医師が子どもの肘に親指を当てながら腕をねじると整復できます。その瞬間に医師はクリッという感触を感じます。整復後、腕を動かしても痛がらないか、バンザイできるか確認しますが、診察室では嫌がる子もいるので、病院を出る前に待合室で親がもう一度チェックされればいいでしょう。なお、帰宅後、また痛がったり動かすのを嫌がる場合は骨折していることもあるので、その際は整形外科を受診してください。

(中島滋郎)