股のひらきの悪い赤ちゃん

 

 実際には家庭で「股の開きが悪い」ことに気付かれることは少なく、健診で医師が赤ちゃんの股の開きが悪いことを指摘することになります。「股の開きが悪い」ことを開排制限があるといいます。開排制限は発育性股関節脱臼にみられるサインです。

 人間は体重を支えて歩くために骨盤の凹んだ穴にふとものの骨がはいりこんで股関節を作っていますが、発育性股関節脱臼はこれが外れてしまっている状態(=脱臼)です。脱臼という病名がついていますが、赤ちゃんはまったく痛がりません。

 開排制限以外のサインとして、下肢の長さの左右差、仰位で膝をそろえて曲げたときの膝の高さの左右差、さらに太ももの皺の位置が違ったりするサインもあります。ただし股関節に異常がなくてもこれらのサインがみられることもありますので、診断にはレントゲンや超音波検査などが必要です。

 女の子の方が男の子の10倍の頻度であるなど先天的な要因が強いとして、昔は先天性股関節脱臼と呼ばれていましたが、下肢を伸ばした格好でおむつをされるなど間違った育児習慣も重要な要因であることから最近ではで発育性股関節脱臼と呼ばれることが多いようです。

 1970年頃まで整形外科ではこの病気の赤ちゃん達が行列をなして診察を待っているという状況がみられました。これは昔一般的であった「巻きおむつ」という赤ちゃんの下肢の動きを制限する育児法が関係していました。「赤ちゃんの足を自然な位置に」というキャンペーン等で患者数は劇的に減少し、現在では1,000人に1~2人といわれています

 治療は、軽度の場合はおむつの当て方や抱き方を股と開くように心がけるだけで治りますが、治らない場合はハリーメンビューゲルという装具を3か月くらい装着します。それでも治らない場合や発見が遅れた場合は入院して両下肢を牽引したり、手術したりすることになります。

 早期発見が大切な病気です。女児であること、骨盤位分娩、家族(特に母方の家系)に本症がみられる場合は、発達性股関節脱臼になる確率が高いことがわかっています。そのようなことがあれば健診の時にその旨を医師に伝えてください。また、おむつをつけるときに、股の開きが悪いかなと思われる場合は一度、かかりつけの小児科医にご相談ください。

補遺:スリングを使うときは赤ちゃんの股関節がしっかり広がった状態で使うよう注意してください。

(小川 哲)