子どものメタボリックシンドローム

 

cc268 肥満がいろいろな生活習慣病の原因となることは、よく知られています。とくに内臓に脂肪がたまると血液中の糖を調節するインスリンの働きがにぶるために血糖値や中性脂肪、血圧が上昇して、動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こしやすくなります。このような状態をいわゆる「メタボリックシンドローム」と言います。厚労省の小児期メタボリックシンドロームの診断基準では(1)腹囲80cm以上(小学生では75㎝以上、または腹囲/身長比0.5以上)、(2)血清脂質(中性脂肪120mg/dl以上かつ/またはHDLコレステロール40mg/dl未満)、(3)血圧(収縮期血圧125mmHg以上かつ/または拡張期血圧70mmHg以上)、が目安とされていています。

 子どもの肥満は、この30年間で約3倍に増加したと言われています。今までメタボリックシンドロームは中高年の生活習慣病と思われていましたが、大人と同じように子どもでも、すでに内臓に脂肪がたまりだした肥満がみつかりだしています。

 子どもの場合、動脈硬化が進んだ例や高血圧はまれですが、脂肪肝(肝臓に脂肪がたまり、肝臓が傷んだ状態)や耐糖能の低下(インスリンの働きが悪くなり、糖尿病の一歩手前の状態)、高インスリン血症にともなう皮膚の色素沈着(首すじ、わき、またの皮膚の黒ずみ)がしばしば認められます。

 内臓にたまった脂肪を減らす薬は今のところなく、手術で取りのぞくこともできないので病院を受診しても長続きしないのが実状ですが、放っておくと将来、高い確率で脳梗塞や心筋梗塞などの重大な病気が引き起こされます。治療はライフスタイルの改善しかありません。それには医師による指導とともに、保護者の理解と協力がなによりも大事です。

(山口 仁)

 

 その他   投稿日:2006/09/01