鼠径(そけい)ヘルニア

 

cc247 そけいヘルニアとは、鼠径部(股の付け根)におなかの中の臓器が出てくる状態をいいます。出てくる臓器は、ほとんど腸、特に小腸(いわゆる“脱腸”)ですが、女の子の場合には卵巣や卵管が出てくることもあります。男の子の場合、陰のうの中に腸が入り込み、「睾丸がはれた」といって来院する場合もあります。このような場合は、陰のう内に水がたまった陰のう水腫や精素水腫と識別する必要がありますが、小児科医や小児外科医など経験を積んだ専門医ならそれほど鑑別は難しくありません。そけいヘルニアの場合、泣いたり、おなかに力を入れたとき膨らみます。この膨らみは軟らかく、全体を軽く圧迫すると引っ込みます。この膨らみが急に硬くなったり、圧迫しても元に戻らない状態をヘルニアの嵌頓(かんとん)といい、不機嫌になり、痛みを訴え、やがて吐いたりするようになります。そして腸閉塞を起こしたり、重大な状態になることがあります。このような時は、すぐ手術が必要です。

 そけいヘルニアは自然に出なくなることがありますが、再び出だすこともあります。年齢が進むにつれて自然に出なくなる可能性は少なくなります。根本的な治療法としては、重大なことが起こるまでに手術をして、腸が出てくる穴を閉鎖してしまうしか方法はありません。

 以前ヘルニアバンドなどが使用されていましたが、他の合併症を引き起こす可能性もあり、あまりおすすめできません。

 最近では、麻酔や手術の進歩により安全に手術ができるようになり、傷跡もあまり目立たなくすることができるようになりました。入院は、通常1~2日くらいです。(病院によっては日帰りのところもあります)。手術年齢は原則として、何歳の時でも乳児でも可能です。ヘルニアが出るたびに心配しているより、手術をしてすっきりと治してしまう方をお奨めします。手術後に反対側にヘルニアがでてくることがあり、その頻度は5~10%です。手術後の再発は極めて稀で1%以下です。

(根岸宏邦)

 

 消化器   投稿日:2006/09/01