市中肺炎

 

cc237 お気づきですか?病気の名まえには「体の部位を表す名まえ」と「原因となる病原体の名まえ」があることを。「肺炎」は肺という部位に炎症がおこる病気です。

 口と鼻から吸った空気はのど、気管、気管支、細気管支とすすみ、それぞれの部位で炎症がおこると鼻咽頭炎(いわゆるかぜ症候群)、気管支炎、細気管支炎になります。病原体がさらに奥まで侵入すると肺炎をおこします。肺炎を原因となる病原体で考えると、肺炎球菌やインフルエンザ菌(ヒブ)などによる細菌性肺炎、アデノウイルス・RSウイルス・インフルエンザウイルスなどのウイルス性肺炎、マイコプラズマ肺炎やその他の病原体に分けられます。

 ところで「市中肺炎」の「市中」はその字のとおり「町の中」つまり「一般的な」という意味です。「市中肺炎」とは健康な人でも誰でもかかる可能性がある肺炎のことです。咳やはな水・発熱の症状が続き、聴診で異常を認め胸部X線検査で肺に陰影(かげ)が見つかると肺炎と診断されます。

 「肺炎」といっても病原体が異なると全く違う病気です。ウイルス性だとはっきりすれば抗菌剤は必要ありません。たんを出しやすくする薬(去痰剤)などを服用し症状がやわらぐのを待ちます。細菌やマイコプラズマが疑われる場合はそれぞれに効く抗菌剤を使います。最近では薬が効きにくい菌(耐性菌)が問題となっています。処方された薬を服用しても改善しない時はもう一度相談しましょう。

 多くの肺炎は高い熱が出ますが、熱が高くなくても油断はできません。最も注意したいのは呼吸の状態です。咳が強くて水分がのめない時や眠れない時は早めに受診しましょう。呼吸の回数が増え、胸がぺこぺこする陥没呼吸が見られる時、さらには顔色が悪く唇が紫色(チアノーゼ)になると酸素投与が必要です。急いで受診してください。

 重症になると入院治療が必要となることも多く、また乳児の場合急速に症状が進行することもあります。「肺炎」という病名や熱の高さにとらわれず、呼吸と全身状態の変化に早く気づくことが重要です。いつもとちがうと感じたら迷わず受診しましょう。

(田中 薫)

 

 呼吸器・循環器   投稿日:2013/05/01