胸が痛い

 

cc239 お子さんが「胸が痛い」と訴えられた時、まず「心臓が悪いのでは」と心配されるのではないでしょうか。しかし胸の痛みには色々なものがあり、その発生源は心臓ばかりではありません。胸は、外側を取り巻く骨・筋肉・神経(胸壁)と、その内部にある心臓・血管・肺・食道などから成り立っています。胸の痛みはこれら全てが発生源となり、それぞれ特徴的な痛みを認めます。心臓からの痛みの場合は、通常は狭心痛に代表されるような激しい痛みで運動時などに見られることが多いです。川崎病などに罹ったことのあるお子さんは要注意です。肺からの痛みの場合は、激しい咳や息苦しさなどを伴うことがあります。胸壁など表面の痛みは、痛みの場所がはっきりしており鋭い痛みが多く、筋肉や骨(軟骨)からの痛みは、姿勢の変化や咳で増強するのも特徴です。また食道からの痛みは、食事により増減することがあります。

 一方、胸の痛みを原因別でみると、原因不明のもの(特発性)が全体の40~50%、精神・神経性のものが20~30%と、そのほとんどが明らかな疾患とは考えにくいものです。

 「胸が痛い」とお子さんが訴えた場合、まずは訴えの内容を詳しく聞きましょう。小さいお子さんほど自分の症状がうまく表現できません。胸の不快感や動悸、吐きけなども含めて「胸が痛い」と訴えている場合があります。また、痛みを訴えている時の様子をよく観察しましょう。痛いと言いながらも遊んでいる場合は緊急性がないと思われますが、顔色が悪くなるなど痛みが強い場合は要注意です。痛みを繰り返す場合は、痛みの程度・起こりやすい時期(時間)・頻度・部位・持続時間などを把握することが重要です。また咳や嘔吐など、胸の痛みに伴う症状にも注意が必要です。

 お子さんの「胸の痛み」のほとんどは、重篤な疾患でないことが多いです。しかしながら、痛みが激しく持続する場合や繰り返す場合は、一度小児科で相談されることをお勧めします。

(松下 享)

 

 呼吸器・循環器   投稿日:2006/09/01