無菌性髄膜炎

 

 「発熱」がみられ、かぜかな? と思っても激しい「頭痛」があり、「嘔吐」を伴うような場合には髄膜炎を疑う必要があります。この3つの症状に注意をしてください。

 “無菌性”という言葉の意味は“細菌性”ではないという意味です。細菌性髄膜炎は命にかかわったり後遺症を残したりすることのある重症の病気です。一方で、この“無菌性”髄膜炎は大抵が自然になおる良性の病気です。

 無菌性髄膜炎はさまざまなウイルスでおこりますが、よくあるのはおたふくかぜのウイルスです。その他、エコーウイルス、コクサッキーウイルスなどのエンテロウイルスという夏場に流行しやすいかぜのウイルスでも起こります。夏かぜはヘルパンギーナとか手足口病などの診断名でおなじみがありますね。このようなウイルスに感染しても大部分は発熱と感冒症状、軽い胃腸症状程度で終わります。しかし、ウイルスは腸や扁桃腺などのリンパ節から血液に侵入し、全身に運ばれることがあります。その結果、髄膜や脈絡膜という頭の中の組織でウイルスが増殖するようになれば、髄膜炎を合併することになります。夏かぜの無菌性髄膜炎は例年5月中下旬から患者数が増えはじめ、7月にピークを迎えます。最近では2002年に大きな流行がみられました。

 さて、病院に行くと横になって首を持ち上げるような診察をよく受けます。髄膜炎を起こすと首が前に(胸の方に)曲がりにくくなり、無理をすると子どもさんは痛がります。これは項部硬直といって、髄膜炎を疑わせる髄膜刺激症状の一つです。

 髄膜炎の最終的な診断は髄液検査をすることによりなされます。髄液というのは脳から脊髄を循環している液のことで、その採取は背中の脊椎のすき間から行います。この手技は難しくなく安全ですが、痛みは強いです。子どもさんが痛がり逃げるように暴れると危ないので、押さえ込むように体を固定して行われます。検査後、数日程度比較的強い腰痛を訴えて、歩きにくいこともありますが、通常心配ありません。

 さて、無菌性髄膜炎と診断されても、怖がらなくても大丈夫です。上述したように、細菌性髄膜炎とは異なり、無菌性髄膜炎は予後のいい疾患です。後遺症を残すことも通常ありません。体がだるく、食事もとりにくいことが多いので、入院のうえ、点滴で水分補給を行うことが多いですが、一般のウイルス性かぜと同様、特別な治療薬はありません。まさに、日にち薬ですね。

(田邉卓也)

 

 脳神経・くび   投稿日:2006/09/01