化膿性髄膜炎

 

cc223 人の脳は思考したり、体を動かす命令をだす中枢の臓器で、これを保護するために表面は髄膜という膜に覆われています。髄膜と脳の間には透明な髄液があり、脳は水に浮かんだ状態で外界からの振動、細菌などからしっかり守られています。しかし、たまたま血液中に紛れ込んだ細菌が髄膜まで運ばれ、そこで増殖して髄膜が化膿した状態が化膿性髄膜炎です。

 化膿性髄膜炎の症状は年長児では発熱、嘔吐、頭痛で、症状が進行するとけいれんを起こすことがあります。乳児ではこれといった特徴的な症状はありません。発熱がなくても哺乳力が弱い、機嫌が悪い、なんとなく元気がないという症状の場合もあります。死亡率は10%、難聴、精神発達障害などの後遺症が20~30%にみられます。診断は背中から髄液を採り検査します。

 原因となる主な細菌は生後4か月までは大腸菌とB群溶連菌、6歳までは肺炎球菌とインフルエンザ菌(冬に流行するインフルエンザはウイルスによる病気で、インフルエンザ菌は細菌で全くちがう微生物です)、6歳以上は肺炎球菌となります。国内での年間発症数はインフルエンザ菌性髄膜炎600例、肺炎球菌性髄膜炎200~300例と推定されます。化膿性髄膜炎は決して少ない病気とはいえません。

 治療には経口投与は無効で、診断がつけば早期に抗生物質を注射(静脈内投与)します。近年、抗生物質が効きにくい肺炎球菌、インフルエンザ菌が増加しているので薬剤を選ぶためには注意が必要です。

 我が国でも髄膜炎ワクチンとして2008年末にインフルエンザ菌、次いで肺炎球菌ワクチンが接種できるようになり、この2菌種による髄膜炎は少なくなっていると推定されます。しかし、髄膜炎ワクチン接種により全ての化膿性髄膜炎が無くなる訳ではありません。ワクチン接種済みだから安心と思うことは危険で、どんな場合にも鑑別診断の一つとして化膿性髄膜炎は重要な疾患であることに変わりありません。

(森川嘉郎)

 

 脳神経・くび   投稿日:2006/09/01