Epstein-Barr ウイルス(EB ウイルス)

 

cc194 EBウイルス感染症は感染する年齢により、その症状は2つのタイプに分けられます。乳幼児期のEBウイルス感染症は軽症例が多く、発熱も2~3日であり、他の感染症との区別も難しいため、EBウイルス感染症と確定診断できないまま、いつのまにか感染している「不顕性感染」がほとんどです。2~3歳までに80%以上が感染し、ほとんどが抗体を保有しているとされていましたが、生活環境の変化などで、欧米と同様に抗体陽性率が低下しつつあります。

 思春期以降の感染では、「伝染性単核症」の経過をとります。典型的な症状は発熱、全身倦怠感、咽頭痛、頸部リンパ節腫脹、肝脾腫(肝臓と脾臓が腫れる)です。病名の由来は、この病気の最盛期に、血液中に異型リンパ球(単核リンパ球)が著しく増加することによります。発熱はリンパ節腫脹とともにはじまり、38℃以上の熱が1~2週間続きます。リンパ節腫脹、肝脾腫は1~3か月以内に軽快します。その他、眼瞼が腫れたり、発疹や関節痛を伴うこともあります。基本的には自然によくなっていき、特別な治療を要しない予後の良い病気です。熱が長く続くので、ウイルスの抗体検査などが行われて診断されることが多くなります。EBウイルスは感染力が弱いこと、抗体を持っている人は唾液中にウイルスを排泄していることなどより、隔離の必要はありません。

 特殊なEBウイルス感染症として慢性活動性EBウイルス感染症があります。EBウイルスの異常増殖を伴い、発熱、肝脾腫、リンパ節腫脹、肝機能障害が3か月以上の長期間にわたって反復したり、持続したりします。肝臓、心臓、肺、骨髄などに合併症を引き起こしたり、悪性リンパ腫を合併したりして予後の悪い経過をたどることがあります。

(吉井勝彦)

 

 感染症   投稿日:2006/09/01