鳥インフルエンザ

 

cc186 ハリウッド映画の「E.T.」や「アウトブレイク」を見ていると、2004年京都府の養鶏場で起こった鳥インフルエンザ騒動の報道映像が脳裏をよぎります。高度に保護された服を着て作業する多くの自衛隊の人たちは本当にあんな装備が必要だったのでしょうか?感染したニワトリの大量処分は本当にあれでよかったのでしょうか?あれで本当に終息したのでしょうか? いろいろと議論のあるところです。

 インフルエンザA型ウイルスはヒトを含む哺乳動物と鳥類に広く分布しています。特にカモからはウイルスの表面に存在するヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という糖タンパク質の種類で分類されるすべての型のインフルエンザウイルスが分離されます。渡り鳥であるカモに害を及ぼすことなく受け継がれているウイルスが、カモからアヒルなどの水鳥を介して家禽であるニワトリに感染し、ニワトリに対して病原性を獲得したものが、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1ウイルス)とされています。このウイルスがヒトに感染すると発熱や咳などインフルエンザと同じような症状を起こして急速な呼吸不全に陥る特徴があり、重症になると肺炎や多臓器不全で死亡する確率が高い感染症であるとされています。

 H5N1ウイルスがヒトに感染し死亡した事例が現在までなかっただけで、日本国内のH5N1ウイルス感染が終息したわけではありません。アジアでは、H5N1ウイルスによるアヒルやニワトリなどの家禽の被害が続いています。2004年にはタイとベトナムで数十名のヒトがH5N1ウイルスに感染し亡くなりました。これらのすべてはアヒルやニワトリ、ブタから感染したと思われるもので、現在ヒトからヒトへの感染例は確認されていません。またニワトリからヒトへの感染も不明な部分が多く、感染したヒトのほとんどが養鶏従事者など感染したニワトリ・糞や羽毛・汚染された土壌などと密接に接触していた人です。そのため、今後国内での高病原性鳥インフルエンザの散発発生の報道があったとしても、慌てて鶏卵や鳥肉を食材から忌避したり、自宅のペットを処分したりする必要はありません。

(川村尚久)

 

 感染症   投稿日:2006/09/01