RS ウイルス(細気管支炎)

 

cc184 RSウイルスはRespiratory syncytialウイルスの略称で、主に寒い季節に多くみられる“かぜ”症候群を起こす原因ウイルスの一つです。施設によってはインフルエンザウイルスと同じように鼻汁検査からウイルスの迅速診断が可能です。

 大人におけるRSウイルス感染は軽度の“かぜ”程度で済みますが、小児、特に乳児においてはしばしば細気管支炎、肺炎、気管支炎などの原因となります。咳や鼻汁、鼻づまりなどの症状で始まり、しだいに咳がひどくなり、ゼイゼイと苦しそうな息になってきます。外来での治療で治っていくこともありますが、ことに未熟児・新生児から乳幼児期にかけてのRSウイルスによる細気管支炎は重篤化しやすく、胸やお腹をペコペコさせて苦しそうに呼吸していたり、顔色が良く無かったり、母乳やミルクの飲みが悪い時は入院が必要です。重症になると酸素吸入や呼吸管理が必要になることもあります。多くの小児は既に乳幼児の時にこのウイルスの初感染を経験しているとされていますが、感染しても十分な免疫が成立しないため、再感染を繰り返します。そのためワクチンの開発も困難となっています。未熟児や心疾患などのハイリスクグループに関しては、RSウイルス感染予防のためにモノクロナール抗体と言われる特異的な免疫注射製剤(パリビズマブ:商品名シナジス)が開発され使用されています。

 また小児科外来や小児病棟・新生児室などにおけるRSウイルスの感染拡大が古くから問題となっています。RSウイルス感染児の鼻汁を含む飛沫からの感染が主な感染経路とされ、伝播したウイルスが鼻咽頭上皮で増殖し、さらに気管支・肺へ広がって呼吸器感染症になるとされています。鼻汁に含まれたウイルスは、皮膚や衣服・おもちゃなどの物品や器具、それらに接触した手指においても感染性を保ち、それが眼や鼻に触れることで施設内・家族内に感染を拡げる接触感染の経路もあるのではないかと重要視されています。乳幼児の保護者の方々や保育所・幼稚園そして医療関係者は、いつも手洗いの大切さを忘れてはいけないということです。

(川村尚久)

 

 感染症   投稿日:2006/09/01