最近始まったワクチン

 

 2008年にヒブワクチンが発売になって以来、肺炎球菌、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス(子宮頸がん)などに対する新しいワクチンが次々に登場しています。またポリオワクチンが経口の生ワクチンから、注射の不活化ワクチンに変わりました。従来の三種混合ワクチンに、このポリオワクチンを加えた四種混合ワクチンもできました。これらのワクチンについて簡単に説明しましょう。

 ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンの主な目的は細菌性髄膜炎の予防です。細菌性髄膜炎は乳幼児の病気で、ヒブ(インフルエンザ菌b)や肺炎球菌が脳を包む膜(髄膜)に感染し炎症を起こします。初期の症状は熱と不機嫌くらいで、かぜと区別できないことが多いため診断が遅くなりがちです。また抗菌薬に耐性化した菌が多く、治療は困難で、罹患したこどもの数%が死亡し、30%くらいに後遺症を残します。小児科医が最も恐れる感染症の一つですが、欧米では1980年代にワクチンが導入され、この病気がほとんどなくなりました。日本では2008年にヒブワクチンが、続いて2010年から肺炎球菌ワクチンも導入されました。生後2か月になったらできるだけ早く受けるようにしてください。

 子宮頸がんワクチンは、初めてのがん予防ワクチンです。子宮頸がんは子宮頸部にできるがんで、20~30歳代の女性がよくかかり、日本では1日10人の女性がこのがんで亡くなっています。初期には症状がなく、自分で気づくことはできません。このがんはパピローマウイルスでおこります。したがってこのウイルスの感染をワクチンで予防すれば、発がんのリスクを大きく下げることができます。2008年に日本でもワクチンが発売されました。

 ロタウイルスは胃腸炎をおこします。頻回の嘔吐に水のような下痢を伴い脱水症をおこします。また脳炎や重い腎障害などをおこすこともあります。感染力が強く保育所などで瞬く間に広がります。ワクチンは生後6週以後、経口的に接種します。市販されているワクチンは2種類あって、投与回数や、いつまでに接種を終わらせるかに違いがありますが、いずれにせよ接種できる期間がとても短いので注意が必要です。

 ポリオウイルス感染すると約1,000~2,000人に1人は手足にまひが後遺症として残ります。日本では約30年前から患者は出ていませんが、世界との交流が盛んな現在ではワクチンの接種を中止すれば必ず流行がおこると考えられています。2012年8月まで使用の経口生ワクチンは、まれにワクチンウイルスによる麻痺が起こっていました。そこで2012年9月からポリオを発病させるおそれがない注射の不活化ポリオワクチンに切り替わりました。さらに2012年11月から、従来の三種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)に、この不活化ワクチンを混ぜた四種混合ワクチンができています。

 ワクチンの種類が大幅に増えました。その分、接種スケジュールを決めるのがたいへんになっています。赤ちゃんが生まれたら、かかりつけ医に早めに相談してください。

(山崎 剛)

MEMO:主な感染症の出席停止期間のめやす
病名 出席停止期間のめやす
インフルエンザ(学校) 発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日を経過するまで
インフルエンザ(保育所、幼稚園) 発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後三日を経過するまで
百日咳 特有の咳が消失するまで、または五日間の適正な抗生物質治療が終了するまで
麻疹 解熱した後三日を経過するまで
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ) 耳下腺、顎下腺の腫脹が始まった後五日を経過し、かつ、元気になるまで
風疹 発疹が消失するまで
水痘 すべての発疹が痂皮化する(かさぶたになる)まで
咽頭結膜熱(プール熱) 主な症状が消退した後二日を経過するまで
溶連菌性咽頭炎 熱が下がり、抗生物質治療開始から24時間経過するまで
RSウイルス感染症 強い呼吸器症状が消失し元気になるまで
特に0歳児のいる保育所などは出席停止が必要
手足口病
ヘルパンギーナ
急性期症状から回復し元気になるまで
伝染性紅斑 発疹が出現した時には感染力はほぼ消失しているので出席停止の必要なし
マイコプラスマ感染 急性期症状から回復し元気になるまで
流行性嘔吐下痢症 水様の下痢や粘血便、嘔吐がなくなり元気になるまで
あたまジラミ 治療は必要だが、通常は出席停止の必要なし
伝染性膿痂疹(とびひ) 乾燥するか、ガーゼで覆える範囲になるまで
伝染性軟属腫(みずいぼ) 出席停止の必要なし

 

 ワクチン   投稿日:2013/05/01