神経芽細胞腫

 

 神経芽細胞腫は神経系に由来する細胞ががん化したもので、小児では白血病、脳腫瘍に次いで多くみられる悪性腫瘍です。主として副腎から発生しますが、他に後腹膜、縦隔等の交感神経節からも発生します。化学療法と手術を組み合わせて治療します。腫瘍が局所にとどまっている場合は治療もうまくいきますが、骨などに転移した進行例では予後が悪く、以前はほとんど死亡していました。これを治すために、造血幹細胞移植を併用した大量化学療法などの工夫がなされてきました。しかし現在においてでも進行例の5年生存率は白血病と比べ良いとはいえません。がん治療の原則は早期発見、早期治療です。幸い、この腫瘍はカテコラーミンを産生するのでその代謝産物である、尿中のVMA、HVAを測定することにより、腫瘍の発見が可能です。これを利用して我が国では、世界に先駆けて1984年から国の施策として生後6か月時にマス・スクリーニングが行われてきました。しかし、結果的には、1歳以上で見つかる悪性の神経芽細胞腫の発生頻度は変わらず、悪性のがんを進行する前に発見するという目的は空振りに終わりました。しかし、このことを通して神経芽細胞腫について医学的には多くの知識がもたらされました。すなわち、マス・スクリーニングで発見された神経芽細胞腫のうち、10~15%は確かに悪い性質をもっているものの、残りの大部分は自然に治る傾向を持っている不思議な腫瘍であるということや、マス・スクリーニングで見つかる神経芽細胞腫と1歳以後に見つかる神経芽細胞腫とは同じ名前を持ちながら、臨床的にも細胞の遺伝子のレベルからも性質の異なる腫瘍群であることが明らかになったのです。おそらく1歳以後に見つかる悪性の神経芽細胞腫はマス・スクリーニング検査以降に発生するのでしょう。このため生後6か月時のマス・スクリーニングの意義は低いということで2004年より国の施策としてのマス・スクリーニング検査は取りやめになりました。しかし、一部の自治体(大阪府(大阪市を除く)、京都府(京都市を除く)、札幌市)では検査の時期を1歳6か月時に変えることによってなるべく効率的に真の悪性の神経芽細胞腫を見つけ出そうとする試みを続けています。この方法で、1歳以後に発生する予後不良の神経芽細胞腫のどのくらいを救い出せるのか、コストに見合う方法なのか、最終結論まではもう少し時間が必要な感じがします。

(迫 正廣)

 

 生後半年から2歳ごろまで, その他   投稿日:2006/09/01