【予防接種を受けましょう】
 

 カゼをひいたりゲリをしたり、子どもたちはいろいろな病気にかかりながらたくましく成長していきます。
 でも、病気のなかには重症になりやすいものもあります。入院しなければならないだけでなく。ときには命を落としてしまうことや、後遺症を残してしまうことも。
このような病気は、子どもたちの成長にとって大きくて危険なハードルです。
 でも安心してください。重症になりやすい病気や治療法のない病気のいくつかについては予防接種(ワクチン)が作られています。
ワクチンで防げる病気は、子どものかかる病気のうちのほんの一部に過ぎませんが、子どもたちの命や健康に大きな影響をおよぼす病気ばかりです。きちんと予防接種を受けることによって、子どもたちをこのような病気から守ることができます。
 保護者の方々と同じように、私たち小児科医は、すべてのお子さんのすこやかな成長を願っています。子どもたちの輝かしい未来のため、ぜひ予防接種を受けておきましょう。

【予防接種(ワクチン)ってなんですか?】
 

 重症になりやすい病気であっても、予防接種によって、その病気に対する「練習(予習)」をしておくことができます。前もって練習しておくことで、本当の病気にかかっても、体はあわてずに対応できます。あまりにうまく対応していたら、かかったこともわからないくらいです。
 予防接種として使うクスリのことを「ワクチン」といいます。ワクチンはそれこそ世界中で一番多く使われているクスリです。先進国だけでなく、生活環境や栄養状態の十分でない途上国の子どもたちにも使わなくてはならないので、非常に安全に作られています。
 たとえば、安全に泳げるようになるためには、はじめは足のつく深さのプールで注意しながら練習しますよね。すべての子どもたちを安全に泳げるようにする。これが予防接種です。 
 では、泳げない子どもをいきなり海や川で泳がせるのはどうでしょう。自然の中の海や川は浅く流れのゆるい安全な場所だけとは限りません。深く流れの急な危険なところもあります。泳げるようになる子がほとんどでしょうが、泳ぎを覚える前に溺れてしまう子もいるでしょう。病気に自然にかかるというのはこのような感じです。プール(ワクチン)のある現代においては、あまりにも危険ではありませんか?

【予防接種の目的】
   予防接種を受けていれば、①その病気にかからないか、②かかっても軽くすむことができ、そして、③まわりにいる他の人へ病気をうつすことも少なくなります。
 ①と②は予防接種を受けた人が得られるメリットで、これを「個人免疫」と呼びます。予防接種を受けた人が、ワクチンで防げる病気から守られるということで、当然のことですね。
 一方、③は予防接種を受けた人の「まわりにいる人」、すなわち、家族や友人などにとってのメリットです。これは「集団免疫」と呼びます。予防接種をきちんと受けて、自分が病気にかかりにくくなれば、他の人にうつすことも少なくなります。多くの人が予防接種を受ければ、地域での病気の流行がなくなります。そうなると、予防接種を受けていない人もワクチンで防げる病気から守られるのですね。
 地域社会にはいろいろな人がいて一緒に生活しています。赤ちゃんやお年寄り、妊娠している女性、体に重い病気を持っている人など、体力の落ちた抵抗力の弱い人も少なくありません。実はこのような人にこそ予防接種が必要なのですが、年齢や体調によっては、予防接種を受けたくても受けられないこともあります。このような人たちをワクチンで防げる病気から守るためにも、地域ぐるみの予防接種が必要なのです。
【ワクチンの区分】
   ワクチンにはいろいろな区分の仕方があります。「生ワクチン」、「不活化ワクチン」、「定期接種」、「任意接種」などがあります。
 「生ワクチン」というのは、病気の原因となるウイルスやばい菌などの病原体の毒性を、病気が起こらない程度に弱めたものです。その病気に軽くかかったような状態になるので、自然にかかるのと同じような免疫をつけることができます。通常は1回接種ですが、予防する病気によっては2回以上の接種が必要なものもあります。BCG、経口ポリオ、MR(麻しん風しん混合)、水痘、おたふくかぜなどです。
 「不活化ワクチン」というのは、免疫をつける力は残しつつ、病原体の毒性を完全になくしてしまったものです。複数回の接種が必要ですが、その病気にかかったような状態にはなりませんので、より安全に免疫をつけることができます。ヒブ、小児用肺炎球菌、DPT(百日せきジフテリア破傷風混合)、日本脳炎、B型肝炎、インフルエンザ、不活化ポリオ、HPV(子宮頸がん予防)などです。
 「定期接種」というのは、予防接種法という法律で接種について決められているものです。多くは市町村から接種の連絡がきて、たいていは公費(無料)で受けられます。ただし、市町村に実施責任があるので、かかりつけの小児科のある場所が住んでいる市と違うと、公費で受けられないこともあります。BCG、DPT、MR、日本脳炎、DT(ジフテリア破傷風混合)、経口ポリオです。
 「任意接種」というのは、予防接種法での取決めのないものです。「任意」という名前ですが、病気の重さには「定期接種」、「任意接種」で違いはありません。むしろ、子どもにとって必要な予防接種でも、国の怠慢で、「任意接種」のままになっているものも少なくありません。たいていは全額有料ですが、一部は公費(無料や一部負担)で受けられるものもあります。ヒブ、小児用肺炎球菌、水痘、おたふくかぜ、B型肝炎、HPVなどです。
【接種のスケジュール】
   予防接種はその病気にかかる前に受けなければ意味がありません。それぞれの病気にかかりやすい年齢がわかっていますので、望ましい接種時期が決められています。かかる前に接種するためにも、接種できる年齢(月齢)になったら、できるだけ早く受けられるように準備しておきましょう。かかりつけの小児科医を決めて、早めに相談しておくことがおすすめです。年齢(月齢)ごとに、いくつかポイントになることを、下に書いていきます。
 まず、生後2か月になったら、ヒブワクチンや小児用肺炎球菌ワクチンを受けましょう。この二つのワクチンは、赤ちゃんにとって一番恐ろしい細菌性髄膜炎を予防してくれます。どちらの髄膜炎にいつかかるかは、だれにも予想できませんので、できるだけ同時接種で受けてください。接種が遅れることは非常に危険です。ワクチンがあるのに、かかってしまって一生後悔するようなことのないようにしましょう。
 次に、生後3か月になったら、ヒブ、小児用肺炎球菌に加えて、DPT(百日せきジフテリア破傷風混合)やBCGを受けましょう。これもできるだけ同時接種で受けて、一日も早く免疫をつけられるようにしましょう。
 また、1歳になったら、できるだけ早くMR(麻しん風しん混合)を受けましょう。麻しんは今でも治療法のないとても重い病気です。かかってからでは遅いので、1歳の誕生日には受けられるよう、後期健診の時に予約しておくのもおすすめの方法です。MRがすんだら、費用はかかりますが、水痘やおたふくかぜもぜひ受けてください
 同時接種というのは、1回の受診でいくつかのワクチンを接種することです。先進国・途上国を問わず、世界中で広く実施されているもっとも良い方法です。多くの病気に対する免疫を早くつけることができます。どの病気にかかるかはだれにもわかりませんので、一つでも多くの病気に対して早く免疫をつけるというのは、当然のことですね。ワクチンの効き目や副反応は、同時接種で増えも減りもしませんから、安心してください。むしろ、「紛れ込み」といってワクチンとは本当は関係のない副反応を起こすことも少なくなるので、より安全と言うこともできます。
【接種後の副反応について】
   予防接種を受けると、接種したところが赤くなる、腫れる、痛くなることや、熱を出す、ブツブツが出る、けいれんを起こす、というようなことが起こります。これらは、副反応と呼ばれます。この中には、ワクチンと関係がある場合(本当の副反応)も、関係がない場合(ニセの副反応、紛れ込み)もあります。でも、これを区別するのはなかなかむつかしいのです。
 副反応には、よく起こるけれどたいしたことのないものと、めったに起こることはないけれど重いものがあります。
 たいしたことのない副反応には、接種部位の赤み、はれ、痛みや発熱がありますが、何もせずに数日で亡くなります。予防接種で重い病気を予防するのだから、これくらいは大目に見てもらいたいですね。
 重い副反応には、片腕全体がはれる、けいれんや手足のまひなどがありますが、幸いなことみめったに起こりません。数十万回から百万回に1回程度です。
 いずれにせよ、予防接種後に具合の悪いことが起こったら、関係のあるなしにかかわらず、予防接種を受けたかかりつけの小児科医や地域の保健センターや保健所などに連絡してください。
 
【接種方法など】
 

 それぞれの予防接種には、適切な接種時期、接種回数、接種間隔などが決まっています。これらをぜんぶ覚えることは大変ですし、自分だけでしようと考えてもなかなかうまくいきません。そこで、かかりつけの小児科を決めて、普段からよく相談して、予定を立てることをおすすめします。
以下に、標準的な接種を始める年齢(月齢)順に、予防接種の名まえをあげておきます。その年齢になったら、できるだけ早く受けられるように準備しておきましょう。
  ・生まれてすぐ:B型肝炎
  ・2か月:ヒブ、小児用肺炎球菌
  
・3か月:BCG、DPT、経口ポリオ
  ・1歳:MR、水痘、おたふくかぜ、ヒブ(追加)、小児用肺炎球菌(追加)、DPT(追加)
  ・3歳:日本脳炎(1期)
  ・小学校就学前年:MR(2回目)
  ・9歳:日本脳炎(2期)
  ・11歳:DT
 なお、以下のサイトには、予防接種に関するわかりやすい情報が満載です。ぜひ参考にしてください。

 

 VPDを知って、子どもを守ろう。の会 http://www.know-vpd.jp/
予防接種情報